赤字なら法人税はかからない!ただしかかる税金はある

法人税の申告をする際、企業は法人税だけではなく住民税や事業税などの申告も同時に行っています。課税所得が赤字で計上された場合、法人税自体は課税されません。しかし、住民税に関しては、資本金や従業員数に応じて課せられる均等割りという制度によって課税対象となります。

均等割りの課税額は、資本金1千万円以下、かつ従業員数50人以下の企業であれば年間7万円程度です。

また、資本金が1億円以上の企業には外形標準課税という課税制度が適用されます。

外形標準課税法人においては、事業税の一部が付加価値や資本を基準とした計算になります。ここでいう付加価値とは人件費および物件の賃借料と所得を合計した金額のことで、これが黒字であれば付加価値割が発生します。

つまり、たとえ所得が赤字であっても、人件費などに所得以上の金額がかかっている場合は課税対象となるのです。その他にも、資本などに税率を乗じて課税する資本割は必ず発生することになります。

赤字は繰り越して翌年以降の黒字を相殺しよう

赤字となった課税所得分は欠損金と呼ばれます。そして翌年以降に課税所得が黒字に転じた場合、欠損金で所得を相殺することで所得税を減額することが可能です。この制度を「欠損金の繰越控除制度」といいます。

一度生じた欠損金は最大10年間繰り越すことが可能です。ただし、この制度を利用できるのは、欠損金が発生した際に青色申告をしていて、なおかつ、その後も欠かさずに確定申告を提出している企業に限られます。

そのため、繰越控除を利用しようとした際に休眠などで確定申告を行っていなかった期があった場合は、遡って申告をし直す必要があります。

また、資本金が1億円以下の中小法人については、欠損金が課税所得を上回る場合は全額を控除することができ、その期の法人税はかかりません。一方で、資本金が1億円以上の法人は控除に上限が設けられていて、欠損金で控除できるのは課税所得の50%までとなっています。

中小法人なら前期の税金が戻ってくることも

前期の所得が黒字で今期の所得が赤字だった場合、欠損金を繰り越すのと同じように、欠損金を繰り戻すことで税金の還付を受けられる制度もあります。これを「欠損金の繰戻しによる還付制度」といいます。

この制度はもともと、資本の充実していない法人の救済措置として設けられたため、利用できるのは中小法人に限られています。

注意点として、還付の対象となるのは前期に支払った法人税のみです。

例えば、何年も連続で黒字を出していて多額の法人税を納めてきた法人が突然大赤字を出したとしても、前期より前に納めた法人税については還付されません。また、前期に納めた住民税や事業税が戻ってくることもありません。

なお、この還付制度を利用できるのは連続して青色申告をしている法人のみと決められています。いざという時にこれらの優遇制度を利用できるように、青色申告は毎期欠かさず行うようにしましょう。