一人親方のほとんどの人がきちんと確定申告をしていると思いますが、確定申告の義務を知っていながらしていないという人もいるのではないでしょうか?確定申告をしないとデメリットしかなく、場合によっては突然税務調査がありばれてしまい重いペナルティが課されます。

一人親方とは?

一人親方とは、従業員を雇わないで独立して事業を営んでいる個人事業主のことをいいます。「一人親方」というと工事現場で働いている人だと思われがちですが、建設業に限ぎらず、職業ドライバーや船員、医薬品の配置販売業なども一人親方に含まれます。

一人親方には確定申告の義務があります

会社員は年末調整を通じて申告や納税をすることになりますが、一人親方の場合、年末調整は行われずに自分で売上や経費を集計して確定申告をする必要があります。

青色申告とは

確定申告は青色申告と白色申告の2つの申告方法があります。

青色申告とは複式簿記による記帳を行う納税者に対して特典が与えられる制度のことです。青色申告者になるためには、青色申告承認申請書に必要事項を書いて税務署に提出して承認を受けなければいけません。手続きを行わなければ青色申告者として申告できません。

税務署は申請に基づき審査を行います。申請した年の12月31日までに通知がなければ申請が承認されたことになります。1月15日以前に新規開業を行った場合と白色申告から青色申告へ切り替えを行う場合は、承認を受けようとする年の3月15日までに提出します。1月16日以降に開業を行った場合は業務を始めた日から2か月以内に提出します。

青色申告をすることによって、白色申告にはない利点があります。

1つは1年間で最大65万円を所得額から控除することができます。2つめは、純損失の繰越控除及び繰戻し還付ができます。1年目の所得が黒字で税金を支払い2年目は赤字になった場合に、昨年納付した所得税のうち赤字の所得税が還付できます。また、前年が赤字で今年が黒字であった場合は、今年の黒字から赤字を差し引くことができるという利点があります。

白色申告とは

白色申告とは、所得税などの確定申告の際に、青色申告をしていない人が行う申告方法です。

白色申告は、平成25年までは収入が300万円以上の事業者に帳簿保存や記帳が義務となっていましたが、平成26年度に制度が改正された事により、300万円以下の事業者にも帳簿保存及び記帳が義務化されています。

また、白色申告する人は、帳簿を保存する期間が変更になる場合があるので注意が必要です。

平成25年以前は、年収300万円に満たない人は記帳制度の対象者に該当しなかったため、帳簿を保存する期間は5年となっていました。しかし、平成26年以降は、全ての人に対して記帳などの保管が義務付けられているので、帳簿の保存期間は7年に伸びています。

なお青色申告では記帳が義務化されている他に、損益計算書と貸借対照表の提出も必要ですが、白色申告の場合、記帳は必要はなく、国税庁が指定した用紙に記入するだけで申告は完了します。

白色申告をする場合には、1年間の総売上金額から必要経費を引いて所得金額を算出します。そしてその所得金額から社会保険料控除など複数の所得控除を引いて、課税所得を計算します。その後、計算した課税所得に税率をかけて納める税金額を決める事になっています。

確定申告の期限

確定申告の期限は、例年3月15日までとなっています。万が一、確定申告が期日に間に合わなかった場合、罰則がありますので、注意が必要です。

まず3月15日以降に申告した場合、税務署からは期限後申告として扱われてしまうため、無申告加算税という罰則規定に基づいた税金が発生します。こちらは本来支払うべきであった所得税に5%上乗せした額の税金を税務署に納めなければいけません。

なお無申告加算税のみならず延滞税と呼ばれる利息も収める必要があります。延滞税は2.6%からとなっていますが、申告が遅れた日数に比例して、最大10%近くの利息に上がってしまうので注意が必要です。

また単に払う税金が増額するだけではなく、税務署から目をつけられやすくなるリスクが高まります。今後、納税する際も税務署によるチェックが厳しくなったり、場合によっては税務調査で職員が会社や自宅に訪問する可能性もあります。

しかし万が一、会社や家庭のアクシデント、トラブルが発生しどうしても期限中に確定申告ができない場合には、「所得税の申告等の期限延長申請手続」という書類を税務署に事前に提出するようにしてください。こういったケースはごくまれでハードルは高いようですが、担当職員が相談に応じた上で対応してくれます。

確定申告をしない場合のデメリット

確定申告をしないと下記のような重いペナルティが課されるので、必ず申告期限までに申告書を提出することをおすすめします。

無申告加算税

納付すべき税額に対して一定の割合を乗じた無申告加算税が加算されます。なお、税務調査を受ける前に自主的に期限後申告書を提出すれば、上乗せされる無申告加算税は軽減されます。

また、期限後に申告書を提出した場合であっても法定申告期限から一か月以内に自主的に提出した場合など、一定の条件を満たした場合は無申告加算税は課されないことになっています。

延滞税

期限までに納税をしない場合、法定納付期限の翌日から納付された日までの日数に応じて延滞税が課されます。なお延滞税の割合は年度によって異なります。

融資が受けられない

金融機関から事業資金の融資を受ける場合やプライベートで住宅ローンの申し込みをする場合などに必ず確定申告書や納税証明書などを提出する必要がありますが、申告をしていなければ当然これらの書類を提出することができず、結果として融資を受けることができなくなります。

また納税を納付期限までにできなかった、申告書を申告期限までに提出しなかったなどの記録は残りますので、融資を受ける際の心証は悪くなります。

建設業許可

建設工事を受注するためには公共事業・民間を問わずに建設業の許可を受ける必要があります。

工事の請負代金が1件あたり1,500万円未満の工事や延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事のような軽微な建設工事の場合は建設業の許可を受けなくても良いのですが、これ以外の規模の建設工事の場合には必要不可欠です。

この建設業許可を受けるための要件の1つに役員のうちの1人に、経営業務の管理責任者としての経験を5年以上有している者が必要になり、この要件を満たすにあたっての証拠として確定申告書が必要になります。

一人親方の確定申告のポイント

外注費と給与の違い

一人親方の仕事が軌道に乗ってきて売上が増えてくると仕事を職人に頼むことになりますが、仕事を手伝ってくれた職人に報酬を支払った場合、その報酬が外注費する場合には支払った全額を経費に計上するだけで終わりですが、給与に該当する場合には、後日の税務調査で源泉所得税や消費税の納税が発生することがあります。

給与に該当すると追加で納税が発生する理由は、事業主は給与を支払う際に所得税を控除し、その控除した所得税を税務署に納税する必要があるためです。また、一人親方が消費税の課税事業者に該当する場合には給与は外注費と異なり課税仕入れに該当せず、その分消費税の納税が増えるためです。

自分は外注費に該当すると思っていても、依頼した仕事が代替可能か、指揮監督を受けているか、材料や道具を与えられているかなどの判定基準があり、この判断基準によっては税務署は外注費に該当せず給与に該当すると指摘することがあります。

土建組合に支払った費用

一人親方の多くは土建組合に加入していますが、土建組合に支払った費用のうち、組合費は経費に計上することができますが、国民健康保険料や労災保険料については事業所得の経費に計上することができず、社会保険料控除として取扱います。

棚卸資産の計上を行う

一人親方が確定申告書を作成する際に正しい利益を計算するため、12月31日時点の棚卸をする必要があります。例えば、12月31日時点で年度の途中で仕入た材料が残っていた場合、その残っている材料は経費に計上することができず棚卸資産として貸借対照表に計上されます。

また、一人親方は工事が完成した時点で売上計上することになりますが、年度内に工事が完了しない現場がある場合には、その現場にかかった経費は支払った年度の経費に計上することができず、仕掛品として貸借対照表に計上することになります。

なお注意しなければいけないのが、仕掛品に該当するのは材料費だけでなく外注費や給与も含まれるという点です。棚卸資産というと商品などの在庫が該当すると思われがちですが、当期の売上に対応しない経費全般が該当することになります。

飲食代はどこまで経費になるのか?

まず接待飲食費というものは基本、交際費として経費処理されるのが通常です。

飲食代は法律的に、「飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く)」となっています。

あくまで得意先との接待での飲食代、それに伴って必要となるサービス料金や、得意先の業務や行事での差し入れとなる「弁当代」、飲食店での接待後、飲食物をお持ち帰りに必要となる「お土産代」などが該当します。

ただし、ゴルフや旅行などでの飲食の費用、飲食物による贈答品や、接待時に必要となった場合の送迎費用などは、飲食費とはなりません。

法律的に別扱いとなっている「社内飲食費」には、法人の役員や従業員、それらの親族に対しての接待などに際して支払われる飲食代が当たります。

平成18年に行われた税制改正によって、1人あたり5000円以下の飲食代は交際費からは除外されるようになっていますが、「社内飲食費」はこれに含まれていません。すなわち、従業員たちだけでアフター5に飲みに行ったりした時に、1人あたり5000円以下になるように調整したとしても交際費からは除外されないのです。

ただし、これには例外があり、社内行事など従業員におおむね一律に供与される通常の飲食であるならば、それは「福利厚生費」に該当します。気をつけなければならないのは「福利厚生費」において、「従業員におおむね一律に供与」されているかどうかがとても重要なポイントになるということです。

つまり、一部の特定の従業員たちだけに供与されて、他に供与されていない従業員がいたような場合は、「福利厚生費」は認められません。

ほかにも会議を行ううえでの、茶菓子や弁当、お茶などの飲食物を供与するのにかかる費用は、「会議費」にあたるので「交際費」からは除外されます。

領収書のまとめ方

個人事業主は、経費として申告する分の領収書を、7年間保管しておくことが義務づけられています。7年間分の領収書と言うと膨大な量になりますが、どのようにまとめておけばよいのでしょうか。

まず、領収書を一枚ずつ丁寧に、ノートなどに貼り付けている人がいます。あとから見た時に見やすいというメリットはありますが、一度確定申告をしてしまえば、その後に自分で領収書を見返すことはほとんどないのではないでしょうか。

つまり、恩恵を受けるのは自分ではなく、税務署の人というわけです。そうであれば、面倒で時間のかかる無駄な作業は、できるだけ省いてしまいましょう。

次に、領収書を細かく日付順に並べて保管している、という人もいます。しかし、そこまでする必要はありません。たくさんのレシートの日付を読み取り、並べていくのも大変な作業なので、これも省いてしまいましょう。

と言っても、大まかに分類しておくと分かりやすく便利なのは確かです。そこでおすすめの領収書のまとめ方は、月別に封筒を用意する方法です。

封筒を12枚用意して12ヶ月分とし、そこに領収書を月別にしてどんどん入れていきましょう。封筒の表面には、「〇年〇月」と記載しておきます。この12枚の封筒を、1年分として取っておけば良いのです。

領収書は必ず保管しておく必要がありますが、このようなざっくりとしたまとめ方で十分です。