会社経営者は、個人事業主よりも厳しく税務調査をされます。しかし、すべての会社が税務調査の対象となるわけではありません。

税務署は限られた人員と予算のなかで調査をしています。彼らもある程度ターゲットを絞ったうえで税務調査に入るのです。

ここでは、税務署が税務調査の対象法人を決めるときのポイントを3つに分けて説明します。

自動の「国税総合管理システム」で決める

税務署には国税総合管理(KSK)システムがあります。これは「怪しい会社を自動的に抽出する」システムです。

すべての会社が提出した申告書は、このシステムで集計されています。集計により、異常値が機械的に検出されているのです。

たとえば、多額の特別損失は異常値と見なされます。利益を大幅に削って課税を逃れるために、急遽架空の損失を計上した可能性があるからです。

売上や利益の急増急落も目をつけられます。特に利益の急落は課税逃れに直結するため、厳しく調査される点です。

同規模の同業他社と比較して、売上や利益が少ない場合にも引っかかります。

特に、経費の割合が同業他社より多い場合には、経費の水増しで課税逃れをしている可能性があるからです。

これらの内容を自動的にシステムで検査し、対象法人を絞ったうえで人間による調査に入ります。

法人区分や業界、年数で決める

税務署では法人を3つのグループに分けています。

1つ目が申告良好法人、2つ目が要調査法人、3つ目がその他法人です。それぞれ、過去の納税や申告の内容で区分しています。

申告良好法人にはあまり税務調査に入りません。要調査法人に対しては他より高い頻度で入ります。その他の法人は、個別に目をつけた会社のみを調べるという方式です。

業界については、現金商売が多いところが特に目をつけられます。また、反社会勢力とつながっている可能性がある業界も調査対象となりやすいものです。

その他、歴史の浅い業界も厳しく調査されます。歴史が浅い分、経費の使い方の適性度を税務署が判断しにくいからです。脱税も起きやすいため、牽制も兼ねて積極的に調査をします。

逆に調査されにくいのは不況の業界です。特に斜陽産業といわれているような業界では、調査に入られる確率が低くなります。

法人の設立からの年数も調査に影響します。

一般的には新規に設立してから3期を過ぎるまでは、税務調査はほとんどされません。税務調査では過去3期分を調べるので、4期目に入ってから調べるのが最も効率的だからです。

しかし、不審な点がある会社なら1期が過ぎただけでも調査することがあります。逆に、まったく不審な点がない会社なら5期が過ぎても調査されないこともあるものです。

税務調査のサイクルは3年に1度が基本とされます。しかし、1回調査して問題がなかった会社はサイクルが長くなることが多いです。逆に問題があった会社はサイクルが短くなる傾向があります。

社長個人の資金の動き、言動で決める

たとえば、社長が豪邸を建てる、高級車を買うなどの行為をすれば目をつけられます。

高額な買い物が悪いということではありません。会社の決算や社長自身の確定申告と照らし合わせるのです。

それで不自然な点があれば、調査の対象となります。また、年収が一定の金額を超えた場合は、不自然な部分がなくても調査される確率が上がるでしょう。高額所得者なら自然に見える方法で脱税をすることも可能だからです。

社長個人がブログやSNSなどで情報発信をしている場合は、その内容も影響します。豪華な生活の自慢だけでなく、税金に対する言及が多い場合も警戒されます。

特に、税制に対して批判をする、多くの買い物を経費にする方法を書くなどの行為は危険です。こうした情報発信は税務署の仕事の妨害になります。

情報発信自体を牽制するため、納税に問題がなくても税務調査に入ることが多いのです。